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■猫の便秘について考える
昨今、お客様から「猫の便が固くて排便が苦しそうなんですが・・・」という相談を受けることが多くなりました。そんな相談の多くは10歳以上の高齢猫ちゃんが殆どです。 そのシャム猫ちゃんは、とにかく好き嫌いが激しく若い頃から缶詰しか食べず、ドライフードを一切口にしないという頑固猫でした。(調理した肉や魚も食べませんでした) 缶詰は80%前後は殆ど水分なので、できれば好みの繊維質の多いドライフードを探してあげて、水でフードをふやかしたり、普段から水分を沢山摂取できるようにしてあげた方がいいと思いますよ、とお伝えしたのですが、猫ちゃん自身が絶対に受け付けないとのことでお渡ししたサンプルも食べてはもらえなかったのです。そのうちに、徐々に便が固さを増し、ウサギの糞のようなものしか出なくなり、トイレに長い間座るようになりました。そして、食事をしても嘔吐してしまい、終いには黄疸が出てしまいました。 困った飼い主さんが動物病院に相談したところ、やはり繊維質の多いドライフードや缶詰を勧められたそうですが、好みではなく一切受け付けなかった為、レントゲン撮影で状況を見ると何とコロコロのウンチが腸の中に沢山詰まっていたそうで、急遽摘便ということになりました。 しかし、昨今では繊維質もしっかり配合されたドライフードを食べていても便秘症状に陥る猫ちゃんは確実に増えていることは確かで、特に肥満傾向の猫さんの多くが便が硬めです。 でも、それならば毎日しっかり水分を摂取して、繊維質を多く含むドライフードを食べているのに何故、便が硬くなったり、出にくくなる猫ちゃんが多いのでしょう? 極度の便秘にはなっていないまでも、飼い主さんが昔に比べ確実に排便状態が悪くなったという猫ちゃんの特徴を調べてみました。
1.10歳以上の高齢猫 2.普段から小食で偏食な長毛種 3.普段から水分摂取量が少ない
4.ドライフードを好まず、ささみや缶詰のみを主食として他に余り水分を摂らない 5.多頭飼いで常にストレスを抱えている 6.長期に渡り抗生物質等を投与された後から便が出にくくなった 7.避妊去勢の手術後から体重が増加し肥満になった 8.運動することが少なくいつもゴロゴロ寝てばかりいる (事故などで骨盤が狭くなっている等の特殊なケースは除きます)多くの排便トラブルを訴える猫ちゃんのケースが上記のケースにあてはまりました。中でも長毛種で高齢猫は特にその傾向が強いようです。更に高齢になるとよく吐くというケースと便秘がダブルで見られることにも多いようです。 また、多くのお客様に共通することですが便秘を非常に軽視している方が多いようです。 最初は長さと太さ、艶のあるしっかりした便から徐々に短くコロコロした便に変わっていきます。 でも、そのうちに猫ちゃんの様子がおかしいことに気づき始めます。それが以下のような内容です。 ●トイレに入る前に必ず駆け回る。(高齢になると駆け回ることも余りなくなります) ●トイレに何度も出入りしたり、便が出るまで長い間トイレに入っている。 ●便をしようと力むと、トイレの中で吐き上げるようになった。 ●毎日の食事量に比べ、明らかに便の量が少ない。 ●以前は長い便が見られたのに、今ではコロコロとした小さな便ばかり ●トイレにしてあるウンチの量が少なくなってきた。 ●運動することが減りゴロゴロ寝てばかりいるようになった。 ●トイレで力んでいて、突然に大声で鳴くことがある 上記のように必ず便秘状況に至るまでに把握できる変化はあるのですが、それ以外には食事も行動も特に変化が見られない為に問題ないと考える方が多いわけです。 でも、確実に・・・そして静かに便秘は進行しているのです。 通常は病院に行けば、なるべく初期は繊維質の多い食事に変えるなどの指導をされます。 でも、便が出せない状態を長く続けたり、放置しておくと状態は悪化し巨大結腸症などの心配も出てきますので、お腹に溜まった便は出してあげなければなりません。そのため、病院では補液を行ったり、腸管刺激剤を与えたり、モニラック(ラクツロース)などの薬剤で便の水分を増やし排泄を促すなどの処置を行いますが、それもそれで何度も与え続けると、薬剤に耐性が出来て徐々に効果が薄くなるなどの問題もあります。 その結果、自力で排便ができず、薬剤でも排便を促すことが出来なくなった場合は「浣腸」や「摘便」といった直接的な方法で溜まった便を出してあげなけれなりません。 浣腸についてですが、猫に慣れた獣医師さんは猫の体への負担を考慮し、体温程度の温水で浣腸を行ってくれることもあるようですが、多くの場合はグリセリンの濃度を調節した浣腸液を使用します。 摘便に至っては、直腸に便が詰まりきって浣腸でも出ない場合の最終的な処置になります。 以上が便秘についての関する問題となりますが、これらはあくまでも対症療法であり、根本的な改善ということではありません。
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